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頼政(よりまさ)

【分類】二番目物 (修羅能)

【作者】世阿弥

【主人公】前シテ:老翁、後シテ:源頼政の霊

【あらすじ】(独吟の部分は下線部です。

諸国一見の旅僧が、京都から奈良に向かう途中、宇治の里に着き、佳勝の地の景色に見とれ、この土地の人の来るのを待ちます。そこへ一人の老人が来合わせたので、僧は名所を尋ねます。老人は旅僧の求めに応じて、あたりの名所を教え、ついで平等院へと誘います。そして、ここは頼政が武運つたなく戦死したゆかりの地であると教えます。僧が合掌して回向すると、老人は喜び、ちょうど今日がその命日にあたり、自分こそその頼政の幽霊であると名乗って消え失せます。

<中入>

そのあと、宇治の里の人がやって来たので、旅僧は、彼から頼政の挙兵の理由や宇治橋の合戦の模様を聞きます。僧は、そぞろ哀れをもよおし、頼政のために読経し、仮寝をします。やがて、僧の夢の中に、法体の身に甲冑を帯びた老将が現れます。僧は頼政と認め、法華経を読誦しているので、成仏疑いないことを伝えます。頼政は、治承4年夏、挙兵した時の様から説き起こし、宇治に陣を構えた模様を語ります。そして、宇治川を挟んでの合戦、平家方300余騎が川を渡ってくる様子、踏み留まっての防戦と語りつぎます。しかし、敗色濃しと見た頼政は、平等院の芝の上に扇を打ち敷き、「埋れ木の 花咲くことも なかりしに 身のなる果ては 哀れなりけり」の辞世を詠じて自害します。その跡が、世にいう扇の芝であると述べ、僧に回向を乞うて、草の陰に消えてゆきます。

【詞章】(独吟の部分の抜粋です。)

かくて源平両家の兵。宇治川の南北の岸にうち望み。閧の声矢叫びの音。波にたぐえておびたたし。味方には筒井の浄妙.一来法師。敵味方の目を驚かす。かくて平家は大勢。橋は引いたり水は高し。さすが難所の大河なれば。そうのう渡すべきようもなかっし所に。田原の又太郎.忠綱と名乗って。宇治川の先陣われなりと。名乗りもあえず.三百余騎。くつばみを揃え川水に。少しもためらわず。群れ居る群鳥の翼を並ぶる.羽音もかくやと白波に。ざっざっとうち入れて。浮きぬ沈みぬ渡しけり。

 

 

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