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天鼓(てんこ)

【分類】四番目物 (雑能)

【作者】不詳

【主人公】前シテ:王伯、後シテ:天鼓の霊

【あらすじ】(仕舞の部分は下線部です。)

昔、中国に王伯王母という夫婦がいました。妻は天から鼓が降り下り、胎内に宿る夢を見て一子を生み、その名を天鼓とつけました。その後本物の鼓が天から下り、その子供の手に入ります。それは実に美しい音を出します。その噂を伝え聞いた天子が、鼓を献上するように命じます。少年はそれを拒んで山中に逃げたが、探し出され、鼓は召し上げられ、その身は呂水に沈められてしまいます。宮中に運び込まれたその鼓は、その後、誰が打っても音を出しません。[ここまでは能では演じられません]

そこで、勅使が少年の老父のもとにつかわされ、宮中へ来て鼓を打つように命ぜられます。愛児を失った老父は、日夜悲嘆にくれていますが、勅命を受け、自分も罰せられる覚悟で参内します。恐れかつ懐かしむ心で鼓を打つと、不思議にも妙音を発しました。この奇跡に、天子も哀れを感じ、老父に数多の宝を与えて帰らせます。

<中入>

そして天鼓のために、呂水の堤で、追善の管絃講(音楽法要)を行います。すると天鼓の霊が現われ、今は恨みも忘れて手向けの舞楽を謝し、自ら供えられた鼓を打ち、楽を奏し、喜びの舞を舞って興じます。

 

【詞章】(仕舞の部分の抜粋です。)

おもしろや時もげに。おもしろや時もげに。秋風楽なれや松の風。柳葉を。払って月も涼しく。星も相逢う空なれや。烏鵲の橋のもとに。紅葉を敷き。二星の館の前に風冷やかに夜もふけて。夜半楽にも早なりぬ。人間の水は南。星は北にたんだくの。天の海面雲の波。立ちそうや呂水の堤の。月にうそむき水にたわむれ.波をうがち。袖を返すや。夜遊の舞楽も時去りて。五更の一点鐘も鳴り。鳥は八声のほのぼのと。夜も明け白む時の鼓。数は六つの巷の声に。また打ち寄りて現か夢か。またうち寄りて現か夢.幻とこそなりにけれ。

 

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