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玉葛たまかずら

【分類】四番目物 (雑能)

【作者】金春禅竹

【主人公】前シテ:女舟人、後シテ:玉葛内侍の亡霊

【あらすじ】(舞囃子の部分は下線部です。仕舞の部分は斜体の部分です。)  

諸国一見の旅の僧が、奈良の社寺を巡拝の末、初瀬の長谷観音へと参詣に出かけます。初瀬川のあたりまで来ると、一人の女性が、底も浅い山川の岩間伝いに小舟に樟さしてやって来ます。不審に思って言葉をかけると、女は自分も長谷寺へ詣でる者ですと答え、「海士小舟初瀬の川」と古歌にも詠まれていますから、舟に乗っていても不思議ではありますまいと答えます。そして、僧を二本の杉の木へと案内し、玉葛内侍が筑紫から都へ逃げ上り、ここへ来たところ、母夕顔の侍女右近に巡り会ったことなどを語り、自分はその玉葛の亡霊であるとほのめかして消え失せます。

<中入>

僧が哀れに思って、読経していると、玉葛の亡霊が現れ出で、乱れた思いに狂い舞いますが、やがて昔のことを懺悔して妄執を晴らし成仏したと見えるや、僧の夢も覚めました。

 

【詞章】(舞囃子の部分の抜粋です。仕舞の部分は下線部です。)  

恋いわたる身はそれならで。玉葛。いかなる筋を。尋ねきつらん。尋ねても。法の教に逢はんとの。心ひかるる一筋に。そのままならで玉葛の。乱るる色は恥ずかしや。つくも髪。

<カケリ>

つくも髪。我や恋うらし面影の。立つやあだなる塵の身は。はらえどはらえど執心の。ながき闇路や。黒髪の。飽かぬやいつの寝乱髪。むすぼほれゆく思いかな。げに妄執の雲霧の。げに妄執の雲霧の。迷いもよしやうかリける。人を初瀬の山おろし。はげしく落ちて.露も涙も散りぢりに秋の葉の身も。朽ちはてね怨めしや。怨みは人をも世をも。怨みは人をも世をも。思いおもわしただ身ひとつの。報いの罪やかずかずの.浮き名に立ちしを懺悔の有様。あるいは湧きかえる.岩もる水の思いにむせび。或いはこがるるや身より出ずる.玉と見るまで包めども。ほたるに乱れつる。影もよしなや恥ずかしやと.この妄執をひるがえす。心は真如の玉葛。心は真如の玉葛。長き夢路は覚めにけり。

 

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