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篭太鼓(ろうだいこ)

【分類】四番目物 (雑能)

【作者】不詳

【主人公】シテ:関清次の妻

【あらすじ】『鼓ノ段』の部分は下線部です。

九州松浦の何某は家人の関清次という者が、他郷の者と口論の末、相手を殺害したので、捨てておけず、捕らえて牢に閉じ込め、下人に番を命じます。ところが、ある夜、清次は牢を破って逃げてしまいます。領主は清次の妻を呼び出し、夫の居所を尋ねます。女は知らないと言い張るので、判明するまで身代わりに入牢させます。領主は再び逃さないため、牢に太鼓を掛け、一刻ずつそれを打って番をするように下人に申し渡します。ところが女がにわかに狂気を起こしたようなので、牢から出してやろうとすると、この牢こそ愛する夫の形見だから出ないと言います。そのやさしい心に感じた領主は、夫婦ともに許すことにします。牢から出て来た女はそこに掛けてある太鼓を見つけ、古歌を引いて夫の身を案じ、中国の鼓の故事を歌いながらその鼓を打ちます。すると却って狂乱の態が増し、夫を慕うあまり、なつかしいこの牢を離れないと、再び牢の中に入ってしまいます。領主は、あまりの痛々しさに深く心を打たれ、亡父十三年の追善にと夫婦の赦免を強く約し、神明に誓います。すると女は冷静になり、初めて夫の居所を明かし、自ら夫の許を訪ねて連れ戻して、仲睦まじく暮らします。

【詞章】『鼓ノ段』の部分の抜粋です。)

鼓の声も時過ぎて。鼓の声も時過ぎて、日も西にかたむけば。夜の空も近づく。六つの鼓打とうよ。五つの鼓はいつわりの。ちぎりあだなるつまごとの。ひき離れいずくにか。わがごとく忍び寝の。やわらやわら打とうよや。やわらやわら打とうよ。四つの鼓は世の中に。四つの鼓は世の中に。恋ということも。うらみということも。なき習いならば。ひとり物は思わじ。九つの。九つの。夜半にもなりたや。あら恋しわがつまの。面影に立ちたり。嬉やせめてげに。身代わりに立ちてこそは。二世のかいもあるべけれ。この篭出ずることあらじ.懐かしのこの篭や。あら懐かしのこの篭。

 

 

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