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鵺(ぬえ)

【分類】五番目物 (切能)

【作者】世阿弥

【主人公】前シテ:舟人、後シテ:鵺の霊

【あらすじ】(仕舞の部分は下線部です。)

諸国を行脚する旅の僧が、三熊野へ参詣した後、都に上る途中、摂津国(兵庫県)芦屋の里に着きます。土地の者に宿を乞いますが、旅人に宿を貸すことが禁制になっているとのことで、洲崎の御堂で一夜を明かすことにします。夜更け頃、そこへ異様な風体をした者が、丸木舟に乗って漕ぎ寄せて来ます。不審に思って言葉をかけると、自分は近衛院の御代に、頼政の矢先にかかって命を失った鵺の亡魂であると名乗り、その射止められたときの模様を詳しく語ります。僧は回向をし、成仏をすすめますが、舟人はまた丸木舟に乗って夜の波間に消えて行きます。

<中入>

土地の者が見舞いに来たので、旅僧は頼政の鵺退治の物語を所望します。語り終えた土地の者は、鵺の亡霊への供養をすすめて帰って行きます。僧が海辺で読経していると、鵺の亡霊が現れ、供養を感謝します。そして、夜毎に帝を悩ましたため、頼政に退治されたことを語り、これも天罰であったと懺悔し、頼政はその功で、主上より御剣を賜ったこと、その時、宇治の大臣と歌のやりとりがあり、それでも名を上げたことを物語ります。そして、自分はうつぼ舟に入れられて淀川に流され、この芦屋の浮き洲にとどまって成仏できないでいたのだと言い、僧の回向を頼んで、海中へと消えて行きます

 

【詞章】(仕舞の部分の抜粋です。)

東三条の林頭に。しばらく飛行し。丑みつばかりの夜な夜なに。ご殿の上に.飛び蔽えば。すなわちご悩.しきりにて。すなわちご悩しきりにて。玉体をなやまして。怯えまぎらせ給うことも.わがなす業よと怒りをなししに。思いもよらざりし頼政が。矢先に当れば変身うせて。らくらくらいらいと地に倒れて。たちまちに滅せしこと。思えば頼政が。矢先よりは君の天罰をあたりけるよと.今こそ思ひ知られたれ。そののち主上御感あって。獅子王という御剣を。頼政にくだされけるを宇治の。大臣賜わりて。階を下りたもうに.おりふし郭公音ずれければ。大臣とりあえず。ほととぎす。名をも雲居に。あぐるかなと。仰せられければ。頼政。右の膝をついて。左の袖をひろげ。月をすこし目にかけて。弓張月の。いるに任せてと。つかまつり御剣をたまわり。ご前をまかり帰れば。頼政は名をあげてわれは。名を流すうつお舟に。おし入れられて淀川の。淀みつ流れつゆく末の。鵜殿も同じ芦の屋の。浦わの浮きすに.流れかかって。朽ちながらうつお舟の。月日も見えず暗きより。冥き道にぞ入りにける。はるかに照らせ山の端の。はるかに照らせ山の端の月と共に。海月も入りにけり.海月とともに.入りにけり。

 

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