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野宮(ののみや)

【分類】三番目物 (鬘物)

【作者】不詳

【主人公】前シテ:里女、後シテ:六条御息所の霊

【あらすじ】(舞囃子の部分は下線部です。仕舞の部分は斜体の部分です。)

ある秋の夕暮れに旅僧が嵯峨野の野宮の旧跡を訪ねると、そこに美しい里女が現れます。僧が身元をただすと、女は、今日は長月(九月)七日で、人知れず神事を行なう日なので、早く帰ってほしいと言います。僧がなおも尋ねると、女はこの日は昔、光源氏が野宮に六条御息所を訪ねた日である事や、御息所がかつて皇太子妃であったが皇太子と死別した事、その後光源氏と恋仲になったがそれも絶えてしまった事などを語り、最後に自分が御息所であることを明かし、消え失せます。

<中入>

僧は来合わせた里の男から御息所の物語を聞き、夜もすがらその跡を弔うことにします。やがて牛車に乗った御息所の亡霊が現れ、賀茂祭での葵上との車争いに敗れた様子を再現し、僧に妄執をはらして欲しいと頼みます。そして昔を懐かしんで静かに舞をまい、やがて牛車に乗って去って行きます。

【詞章】(舞囃子の部分の抜粋です。仕舞の部分は下線部です。)

いかなる車と問わせ給えば。思いぞ出づるそのいにしえ。加茂の祭の車あらそい主はそれぞと白露の。所せきまで立てならぶる。物見車の様様にことに時めく葵の上の。御車とて人を払い。立ちさわぎたるその中に。身は小車のやる方もなしと答えて立ておきたる。車の前後に。ばっと寄りて。人人轅に取り付きつつ人だまいの奥に.押しやられて.物見車の力もなき.身の程ぞ思い知られたる。よしや思えば何事も。報の罪によももれじ。身はなほ牛の小車の.めぐりめぐり来ていつまでぞ.妄執をたすけ給えや。妄執たすけ給えや。昔に帰る。花の袖。月にとかえす。気色かな。

<序ノ舞>

野の宮の。月も昔や。思うらん。影さびしくも。森の下露。もりの下つゆ。身のおき所もあわれ昔の。庭のたたずまい。よそにぞかわる。けしきもかりなる。小柴垣。露うちはらいとわれし我もその人も。ただ夢の世と.ふりゆく跡なるに。誰まつ虫のねは。りんりんとして風ぼうぼうたる。野の宮の夜すがら。あわれなり。

<破ノ舞>

ここはもとより忝なくも。神風やいせの内外の鳥居に.いで入る姿も生死の道を。神はうけずや思うらんと。また車にうち乗りて.火宅の門をや.出でぬらん火宅。

 

 

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