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難波(なにわ)

【分類】初番目物 (脇能)

【作者】世阿弥

【主人公】前シテ:老翁、後シテ:王仁

【あらすじ】(舞囃子の部分は下線部です。仕舞〔キリ〕の部分は斜体です。クセの部分は上線部です。)

廷臣が従者と共に熊野から京の都に帰る途中、難波に立ち寄ります。すると杉箒を持った老翁が連れの男と共に現れ、天下泰平の春を詠いながら、梅の木陰を掃き清めます。廷臣が老人たちに梅の木のいわれを尋ねると、老翁は難波津の歌、仁徳帝の慈愛、難波の都の平和と繁栄について語り、自分は仁徳帝の即位を推進した百済国の王仁であると名乗り、舞楽を舞うことを約して立ち去ります。

 <中入>

難波の春の夜に木華開耶姫〔このはなさくやひめ〕と王仁が現れて名乗ります。そして木華開耶姫〔このはなさくやひめ〕が梅の花を詠じて舞を舞います。続いて王仁が難波を祝福して舞楽を舞います。舞楽のうちの古の聖賢をたたえ、治世を祝福します。

【詞章】(クセの部分と舞囃子の部分の抜粋です。仕舞の部分は下線部です。)

 〔クセ〕

高き屋にのぼりて見れば煙りたつ。民のかまどは。賑いにけりと。叡慮にかけまくも。かたじけなくぞ聞えける。然ればこの君の。代々にためしを引くことも。げに有難き詔。国々にあまねく。三年の御調ゆるされし。その年月もきわまれば。浜の真砂の数つもりて。雪は豊年の御調物。ゆるす故にはなかなか。いやましに運ぶ御宝の。千秋万才の。千箱の玉をたてまつる。しかればあまねき御心の。いつくしみ深うして。八島の外まで波もなく。広き御恵み。筑波山のかげよりも繁き御影は大君の。国なれば土も木も。さかえ栄うる津の国の。難波の梅の名にしおう。匂いも四方にあまねく。一花ひらくれば天下みな。春なれや万代の。なお安全ぞ.めでたき。

 〔舞囃子〕

打ちならす。うちならす。人もなければ君が代に。かけし鼓も。時守の眠り。さむるは難波の。鐘もひびき。浦は潮の。浪の声ごえ。入江の松風。むら芦の葉おと。いずれを聞くも喜びの。諫鼓苔むし難波の鳥も。驚かぬ御代なり.ありがたや。

<楽>

あら面白の音楽や。あら面白の音楽や。時の調子にかたどりて。春鴬囀の楽をば。春風ともろともに。花を散らしてどうど打つ。秋風楽はいかにや。秋の風もろともに。波を響かしどうど打つ。万歳楽は。よろず打つ。青海波とは青海の。波立て打つは。採桑老。抜頭の曲は。返り打つ。入り日を招き返す手に。入り日を招き返す手に。今の太鼓は波なれば。寄りては打ち、返りては打つ。この音楽に引かれて。聖人御代にまた出で。天下を守り治むる。天下を守り治むる。万歳楽ぞめでたき。万歳楽ぞめでたき。

 

 

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