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六浦(むつら)

【分類】三番目物 (鬘物)

【作者】金春禅竹(?)

【主人公】前シテ:里女、後シテ:楓の精

【あらすじ】(仕舞〔クセ〕の部分は上線部です。仕舞〔キリ〕の部分は下線部です。)

都の僧が東国行脚の途中、相模国(神奈川県)六浦の称名寺に立ち寄ると、折りしも山々の木々が今を盛りと紅葉しているのに、この寺の一本の楓だけが少しも紅葉していないので、不審を思ってみていると、ひとりの里の女が現れます。女は、昔、鎌倉中納言為相卿がこの寺に来た時、この木だけが山々に先立って紅葉しているのを見て、和歌を一首詠じたところ、この木は喜び、功成り名を遂げた上は身を退くのが天の道と信じて、それ以来常緑樹のようになったのです、実は私は楓の精であると言って秋草の中に消え失せます。

<中入>

その夜、僧がここで過ごしていると、楓の精が現れて、草木も成仏できる仏徳を称えて舞をまいますが、明け方になると影の如く消えてしまいました。

【詞章】(仕舞〔クセ〕と仕舞〔キリ〕の部分の抜粋です。)

〔クセ〕

月日経て。移れば変わる眺めかな。桜は散りし庭の面に。咲きつづく卯の花の垣根や雪にまごうらん。時移り夏暮れ秋もなかばになりぬれば。空定なきむら時雨。昨日うすきもみじ葉も。露時雨もる山は。下葉残らぬ色とかや。さるにても。東の奥の山里に。あからさまなる都人の。あわれも深き言の葉の.露の情に引かれつつ。姿をまみえかずかずに。言葉をかわす知遇の縁。深きみ法を授けつつ。仏果を得しめ.たまえや。

〔キリ〕

秋の夜の。千夜を一夜に。重ねても。言葉残りて。鳥や鳴かまし。八声の鳥も数数に。八声の鳥も数数に。鐘も聞こゆる。明け方の空の。所は六浦の浦風山風。吹きしおり吹きしおり。散るもみじ葉の。月に照り添いて。からくれないの庭の面。明けなば恥かし。暇申して帰る山路に。行くかと思えば木の間の月の。行くかと思えば木の間の月の。かげろう姿と。なりにけり。

 

 

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