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小鍛冶(こかじ)

分類】五番目物 (切能)

【作者】不詳

【主人公】前シテ:童子、後シテ:稲荷明神

【あらすじ】(舞囃子の部分は斜体の部分です。仕舞の部分は下線部です。)

一条天皇がある夜に不思議な夢を見られたので、橘道成を勅使として、当時名工として知られた三条の小鍛冶宗近に御剣を打つことを命ぜられます。宗近は宣旨を承りはしたものの、優れた相槌の者がいないので途方にくれ、この上は奇特を頼むほかはないと、氏神である稲荷明神へ祈願のために出かけます。すると童子が現れ、不思議にも既に勅命を知っており、君の恵みによって御剣は必ず成功すると安心させます。そして、和漢の銘剣の威徳や故事を述べ、特に日本武尊の草薙剣の物語を詳しく語って聞かせ、神通力によって、力を貸し与えようといって、稲荷山に消えていきます。

 <中入>

宗近は、しめ縄を張った壇をしつらえ、仕度を調えて、祝詞を唱えて待ち構えます。すると、稲荷明神の使わした狐が現れ、相槌となって御剣を打ち上げ、表に小鍛冶宗近、裏に小狐と銘を入れ、勅旨に捧げると、再び稲荷山に帰っていきます。

【詞章】(舞囃子の部分の抜粋です[第26回名古屋春栄会の舞囃子の部分は斜体の部分です。]。

     仕舞の部分は下線部です。)

宗近勅にしたがって。則ち壇にあがり。不浄を隔つる七重の注連。四方に本尊を掛け奉り。幣帛を捧げ。仰ぎ願わくは人皇六十六代。一條の院の御宇に。その職の誉を蒙る事。これ私の力にあらず。伊弉諾伊弉冉の尊。天の浮橋を踏みわたり。豊芦原を探り給いし御鉾より始まれり。その後南瞻僧伽陀国。波斯弥陀尊者よりこの方。天国ふじとの子孫に傳えて.今に至れり。願わくは。願わくは。宗近私の高名にあらず。普天卒土の勅命によれり。さあらば十方恒沙の諸神。只今の宗近に力を合わせてたび給へとて。幣帛を捧げつつ。天に仰ぎ頭を地につけ。骨髄の丹誠聞き入れ納受。せしめ給えや。謹上。再拝。いかにや宗近勅の剱。いかにや宗近勅の剱。打つべき時節は虚空に知れり.頼めや頼めや。ただ頼め。

<舞働>

東南壇の上にあがり。東南壇の上にあがつて。宗近に三拝の膝を屈し。さて御剱の。かねはと問えば。宗近も恐悦の心をさきとして.かねとり出だし。教えの鎚を。はつたと打てば。ちょうど打つ。ちょうちょうど。打ち重ねたる鎚のひびき。天地に聞こえて。おびたたしや。かくて御剱を打ち奉り。表に小鍛冶宗近と打つ。神体時の弟子なれば。小狐と裏に.あざやかに。打ちたて申す御剱の。刃は雲を乱したれば。天のむら雲ともこれなれや。天下第一の。天下第一の。二つの銘の御剱にて。四海を治め給えば。五穀成就もこの時なれや。則ち汝が氏の神。稲荷の神体小狐丸を。勅使に捧げ申し。これまでなりと言いすててまた。むら雲に飛び乗り。またむら雲に飛び乗りて東山。稲荷の峰にぞ.帰りける。

 

 

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