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邯鄲(かんたん)

【分類】四番目物 (雑能)

【作者】不詳

【主人公】シテ:盧生

【あらすじ】(舞囃子の部分は下線部です。仕舞の部分は斜体です)

中国、蜀の国の盧生という青年が、人生に迷いを感じ、楚の国羊飛山に住む賢者に人生とは何か、問うてみようと旅に出ます。途中、邯鄲の里へ着き、一見の宿屋に泊まります。その宿の女主人は、かつて仙人の法を使う人を泊めたときにそのお礼にと不思議な枕をもらいました。その枕を使って寝ると、夢によって悟りを開くというのです。女主人は盧生の素性や旅の目的などを聞くと、食事の用意が出来る間、しばしその枕を試してみるように勧めます。そこで盧生も、その枕を借りて一眠りすることにします。うとうとすると起こす人がいます。楚の国の帝が位を盧生に譲るという勅使です。盧生は勅使に促されて、天にも昇る心地で輿に乗って宮殿に赴き、王位につきます。それから50年、酒宴は続き、盧生も歓喜の舞をまい、栄華を極めた毎日を送ります。と、その時、宿の女主人が粟の飯が炊けたと起こしに来ます。目を覚ました盧生は、全ては夢であったのかと、しばらくは呆然としますが、人生何事も一炊の夢と悟り、不思議な枕に感謝しながら、自分の故郷である蜀の国へと帰っていくのでした。

【詞章】(舞囃子の部分の抜粋です。仕舞の部分は下線部です。)

寿命は千代ぞと菊の酒。栄花の春も。万年。君も豊に。民栄え。国土安全長久の。栄花もいやましに.なお喜びはまさり草の。菊の盃.とりどりにいざや飲まうよ。めぐれや盃の。めぐれや盃の。流れは菊水の.流に引かれてとく過ぐれば。手まずさえぎる菊衣の。花の袂をひるがえして.指すも引くも光なれや。盃の影のめぐる空ぞ久しき。わが宿の。わが宿の。菊の白露今日ごとに。幾世つもりて淵となるらん。よも尽きじよも尽きじ.薬の水も泉なれば。汲めども汲めども.いやましに出ずる菊水を。飲めば甘露もかくやらんと。心も晴れやかに。飛び立つばかり有明の.夜昼となき楽しみの。栄花にも栄燿にも.げにこの上や.あるべき。
<楽>
いつまでぞ。いつまでぞ。栄花の声も。栄花の声も.常磐にて。なおいく久し有明の月。月人男の。舞なれば。雲の羽袖を。重ねつつ。喜びの歌を。
謡う夜もすがら。謡う夜もすがら。日はまた出でて。明きらけくなりて。夜かと思えば。昼になり。昼かと思えば。月またさやけし。春の花咲けば。紅葉も色濃く。夏かと思えば。雪も降りつつ。四季おりふしは目の前にて。春夏秋冬万木千草も。一時に花咲けり。面白や。不思議やな.かくて時過ぎ頃去れば。五十年の栄華も尽きて。誠は夢の内なれば。女御更衣。百官卿相千戸万戸。従類眷属宮殿楼閣。皆消え消えと失せ果てて。ありつる邯鄲の枕の上に。眠りの夢は。覚めにけり。

 

 

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