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百万ひゃくまん

【分類】四番目物 (雑能)

【作者】世阿弥

【主人公】シテ:百万

【あらすじ】(『笹ノ段』の部分は下線部です。)  

大和国(奈良県)吉野の男が、西大寺のあたりで、一人の幼い子どもを拾い、その子を連れて、京都嵯峨の釈迦堂の大念仏にやって来ます。そして門前の男に、何か面白い見ものはないかと尋ねると、百万という女物狂が面白く音頭をとるというので、それを呼び出してもらいます。やがて、門前の男の念仏に誘われて、百万が出て来て、念仏の音頭をとって踊り、仏前に進んで、我が子に逢わせてほしいと祈ります。すると先の子どもが、あれこそ自分の母親だというので、男は、それとなく百万に事情を問いただします。百万は、夫に死に別れ、子どもは生き別れたため、この様に思いが乱れたのだと語ります。男が、信心によって子どもが見つかるだろうと言うと、百万はその慰めの言葉に力づけられて、奉納の舞を舞い始めます。百万は、我が子に逢おうと、奈良からはるばる旅して、この春嵯峨へやって来たことを述べ、このように大念仏に集まっている中に、我が子はいないのだろうかと、身の上を嘆き、狂乱の状態で仏に手を合わせます。男は、いよいよ間違いなく子どもの母親であると思い、子どもを引き合わせます。百万は、もっと早く名乗ってほしかったと恨みはしますが、仏の徳をたたえ再会を喜びます。

【詞章】(『笹ノ段』の部分の抜粋です。)

げにや世世ごとの親子の道に.まとわれて。親子の道にまとわれて。なおこの闇を晴れやらぬ。朧月のうす曇り。わずかに住める世になお.三界の首枷かや。牛の車の常とわに.いずくをさして引かるらん.えいさらえいさ。引けや引けやこの車。物見なり物見なり。げに百万が姿は。もとより長き黒髪を。荊棘のごとく乱して。古りたる烏帽子.引きかずき。また眉根黒き乱れ墨の。うつし心かむら烏。憂かれど人は.訪いもこで。思わぬ人を尋ぬれば。親子の契り麻衣。肩を結んで裾にさげ。裾を結びて肩にかくる。筵ぎれ。菅ごもの。乱れ心ながら.南無釈迦阿弥陀仏と。信心をいたすも。わが子に会わん.ためなり。

 

 

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