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羽衣(はごろも)

分類】三番目物 (鬘物)

【作者】不詳

【主人公】シテ:天人

【あらすじ】(舞囃子の部分は斜体の部分です。

       仕舞〔クセ〕の部分は上線部、仕舞〔キリ〕の部分は下線部です。)

駿河国(静岡県)三保の松原に住む白龍という漁師が今日も釣にやって来ます。そして、のどかな浦の景色を眺めていると、いい匂いがしてきます。あたりを見廻すと、一本の松の木の枝に美しい衣がかかっています。そこで、家宝にでもしようと持って帰りかけると、一人の女性が現れて呼び止め、それは自分のものだから返してほしいと頼みます。その女性が天人であり、その衣が天の羽衣であることを聞かされた白龍は、そんなに珍しいものかと喜び、国の宝にしようと返そうとしません。天人は羽衣がなくては天に帰れないと、空を仰いで嘆き悲しみます。その姿があまりに哀れなので、白龍は、羽衣を戻すかわりに、天人の舞楽を見せてほしいと頼みます。天人は仕方なく承知し、羽衣を着て月世界における天人の生活の面白さや、三保の松原の春景色をたたえた舞を舞いながら、天空へと上っていきます。

【詞章】(舞囃子の部分の抜粋です[第26回名古屋春栄会の舞囃子の部分は斜体の部分です。]。

     仕舞〔クセ〕の部分は上線部、仕舞〔キリ〕の部分は下線部です。)

春霞。たなびきにけり久かたの。月の桂の花や咲く。げに花かずら.色めくは春のしるしかや。面白や天ならで。ここも妙なり天つ風。雲の通路吹きとじよ。乙女の姿。しばし留りて。この松原の。春の色を三保が崎。月清見潟富士の雪.いづれや春のあけぼの。たぐい波も松風も.のどかなる浦の有様。その上天地は。何を隔てん玉垣の。内外の神の御末にて。月も曇らぬ日の本や。君が代は。天の羽衣まれに来て。なずともつきぬ巌ぞと。聞くも妙なり東歌。声そえて数々の。笙笛琴箜篌。孤雲のほかにみちみちて。落日の紅は.蘇命路の山をうつして。緑は波に浮島が。拂う嵐に花ふりて。げに雪をめぐらす。白雲の袖ぞ.妙なる。南無帰命月天子本地大勢至。東遊びの舞の曲。

<序ノ舞>

あるいは。天つ御空の緑の衣。又は春立つ霞の衣。色香も妙なり乙女の裳。左右さ。左右颯々の。花をかざしの.天の羽袖.なびくも返すも舞の袖。

<破ノ舞>

あずま遊びのかずかずに。あずま遊びのかずかずに。その名も月の。色人は。三五夜中の空にまた。満願真如の影となり。御願円満国土成就。七宝充満の宝をふらし。国土にこれを施したもう。さるほどに。時移って。天の羽衣。浦風にたなびきたなびく。三保の松原浮き島が雲の。足高山や富士の高根。かすかになりて天つみ空の。霞にまぎれて失せにけり。

 

 

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