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芭蕉ばしょう

【分類】三番目物 (鬘物)

【作者】金春禅竹

【主人公】前シテ:女、後シテ:芭蕉の精

【あらすじ】仕舞〔クセ〕の部分は上線部、仕舞〔キリ〕の部分は下線部です。)

楚国(中国)の小水という所の山中に住んで修行する僧が、夜読経する時に庵室のあたりで人の気配がするので、今夜は名を尋ねようと思い、読経を始めると、女が月下に現れ、仏法結縁のために庵をお借りしたいと言います。女は女人成仏、草木成仏の功徳を語り、僧は薬草喩品を読誦します。女は自分が芭蕉の精であることをほのめかして去っていきます。

<中入>

僧は土地の者から、鹿を射て芭蕉で覆い隠したが、その場所を忘れてしまい夢と思って諦めたという芭蕉の故事を聞きます。僧が先ほどの女の話をすると、土地の者は法華経の読誦を勧めます。僧が月の光の下、読経をしていると芭蕉の精が現れて、女体に化身していることを不審に思い尋ねる僧に芭蕉の精が女体である謂れを話します。芭蕉の精は非情草木の成仏を説き、諸法実相を詠嘆して舞を舞います。そして、風の前の芭蕉の姿を見せたと思うと、夢のように消えてしまいました。

 

【詞章】仕舞〔クセ〕の部分と仕舞〔キリ〕の部分の抜粋です。)

〔クセ〕

水に近き楼台は。まず月を得るなり。陽に向える花木はまた。春に会うことやすきなる。その理もさまざまの。げに目の前に面白やな。春過ぎ夏たけ。秋来る風の音信は。庭の荻原.まずそよぎそよかかる秋と知らすなり。身は古寺の軒の草。忍ぶとすれどいにしえの。花は嵐の音にのみ。芭蕉葉のもろくも落つる露の身は。置き所なき虫の音の。蓬がもとの心の。秋とてもなどか変らん。よしや思えば定めなき。世は芭蕉葉の夢の内に。牡鹿の鳴く音は聞きながら。驚ろきあえぬ人心.思い入るさの山はあれど。ただ月ひとり伴い。馴れぬる秋の風の音。起き伏し茂き小笹原。しのに物思い立ち舞う。

〔キリ〕

霜の経。露の緯こそ。弱からし。草の袂は。久方の.久方の。天つ乙女の羽衣なれや。これも芭蕉の葉袖をかえし。かえす袂も芭蕉の扇の風ぼうぼうとものすごき古寺の。庭の浅茅生女郎花刈萓。面影うつろう露の間に。山おろし松の風。吹き払い吹き払い。花も千草も.ちりぢりに。花も千草も.ちりぢりになれば。芭蕉は破れて残りけり。

 

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