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安宅あたか

【分類】四番目物(雑能)

【作者】観世小次郎信光

【主人公】シテ:武蔵坊弁慶

【あらすじ】(舞囃子の部分は下線部です。仕舞の部分は斜体です。)

平家討伐に最も勲功のあった源義経も、戦がすむと兄頼朝から追われる身となります。偽山伏に姿をかえ、奥州に落ちのびようとする義経主従を、頼朝は国々に新しく関所を設けて止めようとします。加賀国(石川県)安宅には、富樫某が下人と共に関を守っています。義経一行は、都を出てやっと安宅に着きますが、関のあることを聞いて、強力〔ごうりき〕に様子を見にやらせると、なかなか用心がきびしいので、義経を強力〔ごうりき〕に仕立て、南都東大寺建立勧進のための一行だといって通ろうとします。しかし関守が全員斬殺すというので、それでは仕方がない討たれようと、殊勝そうに最後の勤行をしますが、山伏を殺せば天罰が当たると威嚇するので、関守は少しひるみ、勧進帳を読めといいます。弁慶がもちあわせた巻物を勧進帳といつわって読み上げ、一度は通過を許されますが、義経の姿を見とがめられ追求を受けます。しかし、弁慶の機転と豪勇で首尾よく、その場を逃れることができます。関を通って、ほっと一息ついているところへ、先刻の関守が後難を恐れ、非礼を詫びるため酒をもって後を追い、一同にふるまいます。酒宴になっても弁慶は油断せず、力強い舞を見せ、関守に暇を告げ、一行に先を急がせます。

【詞章】(舞囃子の部分の抜粋です。仕舞の部分は下線部です。)

人の情けの杯に。うけて心を取らんとや。これにつけても人人に。心なくれそくれはどり。怪しめらるな面面と。弁慶に諌められて。この山陰の一宿りに。さらりと円居して。所も山路の菊の酒を飲もうよ。面白や山水に。面白や山水に。杯を浮かめては。流に引かるる曲水の。手まずさえぎる袖ふれて、いざや舞をまおうよ。もとより弁慶は。三塔の遊僧。舞延年の時の和歌。これなる山水の。落ちて巌に響くこそ。鳴るは滝のみず。[先達一さしおん舞候らえ。]

<男舞>

鳴るは滝の水。日は照るとも絶えずとうたり絶えずとうたりとくとく立てや。手束弓の。心許すな関守の人人。暇申してさらばよとて。笈をおっ取り肩にうちかけ。虎の尾を踏み.毒蛇の口を逃れたる心ちして。陸奥の国へぞ.くだりける。

 

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